さて前回は芥川賞である「コンビニ人間」について書きましたが今回は直木賞受賞作品である「海の見える理髪店」について書いていきたいと思います。
帯には以下のような言葉で書かれています。
誰の人生にもかならず訪れる、喪失の痛みとその先に灯る小さなか光が胸に沁みる家族小説集。伝えられなかった言葉。忘れられない後悔。もしも「あの時に」戻ることができたら・・・。母と娘、夫と妻、父と息子。近くて遠く、永遠のようで儚い家族の日々を描く物語六編。
(荻原さんは15:07秒あたりから)
荻原浩さんは「明日の記憶」の時に初めて読みました。その作家さんの新作という事で荻原さんが得意とする家族をテーマにした短編集なのですが私は好きです。
例えば久しぶりに母親にあった娘の葛藤を描いた「いつか来た道」などは子供がいる人は短編ながらもじっくり読んでしまうのではないでしょうか?
またタイトルにもなっている「海の見える理髪店」。これが一番のお気に入り作品でした。一回読んで、また読み直すとなお面白い。面白いというよりは感動してしまった。
最後のセリフである「あの、お顔を見せていただけませんか、もう一度だけ。いえ、前髪の具合が気になりますもので」と終わったのは思わずウルっとした。
「なぜその日はお客を入れなかったのか?」「庭には赤く錆びたブランコ」というのも、すべて一直線に繋がった瞬間は良いですね。
家族作品というのは自分と重ねたり、また家族愛の再確認したり。私は好きな理由はそこですね。簡単に書けば「家族とはなんだろうか?」という事に答えはないのですが、この六編は6つの答えと言えます。家族愛などをテーマにした作品が好きな方は今回の「海の見える理髪店」はオススメです。逆に「そういったありきたりのは嫌だ」という方にはオススメしません。ただ今回の作品はウルっときます。